2020年3月18日深夜1時、「ハースストーン2.0」の発表がありました。
事前に2月のサミットでクローズドな発表があり、「これはすげぇ! ハース2.0だ!」と招かれた人々が期待をあおっていたため、「2.0」という呼称が定着した次第です。
以下、正式発表の所感をメモがてらまとめておきます。
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この記事の目次
「たった1つ画期的だったこと」
新ヒーローの追加は、デジタルカードゲームではよくあるアイデアです。
具体例としてはシャ○バ、ライ○ルズ、TEP○EN。いわゆる「ハースフォロアー」。源流であるハースストーンは、むしろ導入に遅れたカタチになりました。
デーモンハンターのコンセプトは「攻撃的」ですが、攻撃的なヒーローは他にもたくさんいる。自分で殴って、回復、急襲、大量ドロー────そんなに新しいコンセプトではない。
またプリーストの大幅なバランス調整や、大量のクラシックカードのスタン落ちがおこなわれますが、これもとくに画期的ではない。いつもの調整の延長。
ランクマッチシステムの改善も、なんとも言いがたい。ランク報酬やMMRシステムはほかの対戦ゲームでもよくあることだし、作業は作業。
「2.0」と呼ぶほどの真新しいアイデアはみられなかった。
ただ────1つだけ画期的だとおもったことがあります。
「全レアリティのカードがダブらなくなる」
正直信じられないレベルの変更点です。カードの集めやすさがヤバい。パックをむくのが楽しくなる。いろんなデッキがつくれる。初心者にオススメしやすい。
真新しさはないけど、うれしい要素です。
「異端は一長一短」
「Outcast」を「異端」を訳した翻訳チームはすごい。ほんとうに名訳だとおもう。
ただその効果自体は、興奮するものではない。
「手札の右端または左端にある時に使用すると効果が発動する」
ようは「制限つきの雄叫び」です。
手札の中間にあるうちは弱い……早くほかのカードを切らなきゃ……。トップで引いたらラッキー! 出されたほうは「運ゲーじゃねえか」と悪態をつく。
異端という効果は、ストレス性が高いのでは。
ただし「選択肢がふえる」メリットはあるので、使う側は楽しい、かもしれない。
「急襲のこと好きすぎるでしょ」
急襲は「メンコ感」を強めます。
盤面外からミニオンがとつぜん飛びだしてきて、大事なミニオンを引き倒していく。そして盤面に居すわる。
とてもシンプルで雑なゲーム体験が味わえるだろう2枚。「スペルデモハン」構築が登場するにしても、その道はハンターがすでに通っている。
「突撃」はもう刷らないというデザイナーの方針のもと、かわりに「急襲」が生まれたわけですが、いくらなんでも刷りすぎだろと。
おそらく今のカードデザイナーは、シーソーゲームが好きなんだとおもいます。ピンチとチャンスがいったりきたり。「生命奪取」がふえているのもそのため。
ただやはり、メンコやシーソーをするためにハースストーンしているユーザーはすくない。カードゲームがやりたい。ここに開発陣とユーザーとの「感覚のズレ」をかんじる。
急襲・生命奪取より面白い効果は、ほかにもたくさんあるはずです。
「デザイナーのアイデアが枯渇していないか」
現時点での新カードの感想としては、「マイナーチェンジが多い」。
ドラゴン年もそうでした。クエスト、ヒーローカード、ハイランダー、みんな過去の遺産です。昔見たようなカードが多かった。よくいえば懐かしい、わるくいえば見飽きた効果ばかりでした。
ドラゴン年の目玉であるガラクロンドは、「呪文石」「ヒーローカード」のギミックを踏襲したもの。パワーこそ強大でしたが、真新しさはとくにありませんでした。また専用の祈願カードを複数枚いれる必要があり、デッキ構築の幅を著しく制限した。
フェニックス年も、発表済みカードをみる限りでは、新しいアイデアはあまりない。急襲と生命奪取のメンコ、マナ踏み倒し、進化、無敵、休眠状態。むしろシナジーのバリエーションは過去よりも減っている。
ハースストーンのアイデアは、マンモス年でほぼ出尽くしたのでは。
有名な配信者たちのピークもマンモス年だった。勝率バランスだけでいえば、「ガラクロンドの目覚め」は過去最高レベルなのに、なぜか人口はどんどん減っている。
「飽き」が原因なのはだれの目にも明らかです。
ですがもっと具体的にいえば、「アイデアの枯渇」が主原因なのでは。
「過去のカード」をなぞらえても、ゲーム体験は過去の劣化版でしかない。カードデザイナーの矜恃をみせてほしい。それかデザイナーをふやしてほしい。BLIZZARDにはその力があるとおもいます。
多少ギミックがかぶるのは仕方ないにしても、かぶりすぎでは。
「やっぱりベンブロードがいないハースストーンはダメだな」って、ほんとうは誰も言いたくないでしょ。
どんなに酷い環境でもいい。デザイナーには冒険してほしい。バランスは後から調整すればいい。個人的にはそう願います。
「インフレには賛成だけど反対」
“カードデザインとして,低く調整しようとすると多くのプレイヤーに魅力的に映らないので,徐々にインフレーションが起こることに尻込みしていてはいけないのだと考えています (ブリーン氏)”
▼ 4gamerによる取材記事
「ハースストーン」開発チームインタビュー。「灰に舞う降魔の狩人」で始まるフェニックス年は,挑戦的なことも果敢に行われるフェニックス年の開始を告げる最新拡張パック「灰に舞う降魔の狩人」が,2020年4月8日にローンチされることが発表されたデジタルカードゲーム「ハースストーン」。2月中旬に開催されたメディア向けイベントにて,開発チームのキーメンバー5人にインタビューしたので,その内容を紹介しよう。
自分もインフレには基本的に賛成です。
強くしないとパックが売れないし、プレイヤーも飽きてしまう。
きっと開発者の脳裏には「天下一ヴドゥ祭の失敗」があるとおもいます。ヴドゥ祭は単体効果こそ面白いカードが多かったですが、シナジーが乏しく、前弾にくらべてあまりにも弱いカードばかりだった。
結果、ヴドゥ祭カードの使用率はおそろしく低くなり、「環境変わってねーじゃねえか!」と不満が続出。奇数偶数が殿堂入りした。
新弾のカードは、強くしなければいけない。
ですが「アイデアがないから強化するしかない……」という発想ならやめてほしい。雑なパワーカードはみんな呆れるだけです。
インフレさせるなら、挑戦的な新しいギミックをどんどん出してほしい。インフレーションではなくエボリューションと呼ばせてほしい。
勝率バランスの調整技術は本当にスゴいとおもうんで、尻込みせずにもっと挑戦してほしい。
まとめ「2.0ではないけど変更点はあった」
「2.0」という期待あおりは、正直やりすぎ。
それさえなければ意外性の高い発表だったとおもいます。
期待をあおっていたサミット参加者たちに恨み節をいうつもりはないです。彼らは仕事でやっているし、むしろ「2.0と宣伝してくれ!」と頼まれた背景を想像すると、すこし気の毒にさえおもえます。
ただなんにせよ、変化はありそうです。
新規・復帰プレイヤーにデッキを配ったり、全レアリティでダブりがなくなったり────かなり身銭をきっている。ああ、本気で不死鳥のような復活をめざしてるんだなと。諦めていない姿勢には期待がもてる。
あとはもう、対戦さえ面白ければ。
結局はカードデザイン次第だとおもいます。
よろしくプリ。