hoshimi12です。いつもお世話になっております。
「kindleインディーズマンガ」が先日正式リリースされました。「画期的だ!」とおもう一方、「大丈夫かこれ……」とおもう部分もあり、気になるので考えてみることにしました。
この記事の目次
はじめに 「Kindleインディーズマンガってなんぞ?」
Kindleインディーズマンガとは、Amazonジャパンがスタートさせた新しい個人出版プログラムです。JPEGをアップロードするだけで、カンタンにKindleストアへ作品を掲載できます。
ただし、無料作品です。
上位者若干名に対して分配金を支払う(2018年7月は上位20名に10万円)とは言っていますが、それ以外の作者には一円たりとも入りません。
「マンガ版YouTube」ではない
2018年現在、「総額2000万円のインディーズ無料マンガ基金」から分配金を支払うというスタイルから、「マンガ版YouTubeじゃん!」という意見も見受けられました。ですが──まったくの別物です。少なくとも今は。
YouTubeは、努力(再生数)に応じて分け隔てなく成果が与えられます(ただしチャンネル登録者数や広告の種類にもよる)。
一方このKindleインディーズマンガは、「上位者」にしか報酬がありません。どんなにがんばってもそれ以外のランカーは無報酬です(「やりがい」が報酬だというなら別)。
もちろん、このプログラムがもっとメジャーになってユーザーも増えれば、違ったカタチがあるかもしれませんが。
プログラムへの個人的な感想
「報酬やっす……」
天下のAmazon Kindleストアで、上位20名に入って、10万円──これめちゃくちゃ安くないですか……?
「2018年末まで続ける総額2000万円のインディーズ無料マンガ基金」とのことですが、7月の予算が20名×10万円=200万円として、残り5ヶ月で1800万円。1ヶ月あたり360万円ほど使える。ただ、参加者(ライバル)が徐々に増えていく。そのぶん報酬総額が増えるわけでもない。というか上位者が固定化されたらどうするの……? いろいろと疑問があります。
Kindleインディーズマンガの上位に入れるようなマンガ家さんは、たぶんふつうに有料販売したほうがよほど実入りがイイですよ。この点はどうも「やりがい搾取」という言葉が過ぎって仕方ないです。
ただもちろん、Amazonはこのプログラムを成功させたいわけですから、参加者に「気まぐれ」や「他の特典」を用意する可能性もあります。──このあたりの予測は後述します。
「UIしょぼ……」
KDPにしては、凝ったページだとおもいます。ただ、競合他社のインディーズマンガ掲載サイトと比べて、デザイン性も使い勝手も格段に劣ります。
Kindle UnlimitedやPrime Readingの使い勝手が未だ絶望的なことを見ても、これが改善されるのは遠い未来になるような気がしてなりません。
ただ、読者はともかく、作者にとっては取っつきやすいシステムだとはおもいます。
「ぜんぜんインディーズじゃねぇ……」
良くも悪くも、すでにプロが多数参入しています。出版社を通していないのでインディーズといえばインディーズかもしれませんが、こうなってしまっては無名者にはなかなか厳しいでしょう。(Amazonと読者にとっては嬉しいことだと思います)
しかもランキング形式なので、一度上位に食い込んだ作品が上位に居座りつづける性質があります。このあたり、kindleストアはどう「救済措置」を用意するのか気になるところです。
4つの展望予測
「Amazonがこうしたプログラムをスタートさせた」こと自体は画期的だとおもうのですが、今は報酬が少なく、UIも競合他社に劣っています。
このあたりどうやって差別化していくのか、どうやってユーザーに「夢」を見させるのか──以下、比較的ポジティブな展望予測をしてみたいとおもいます。
予測1「Amazon独自レーベル発足」
アメリカではすでに始まっています。KDP(個人出版)作品を、Amazonがスカウトし、商業作品としてリリースする。つまりAmazonが「出版社」の役目をするわけです。
究極の囲い込みですね。
Kindleインディーズマンガで無料作品を集めて、テキトーに小金をばらまきつつ、めぼしい作品をスカウトして独自レーベルで出版する。日本の出版社が「ハイエナ&焼畑」してやってることを、Amazonは完全に「自家栽培から収穫まで」できる。ユーザーも「夢」が見られる。
「ストアであり取次であり出版社であるAmazon」の姿、「出版業界=Amazon」の構図。──こういった可能性を、ひとつ考えました。
予測2「マンガ版YouTube化」
究極的に目指しているカタチは、コレなのではと思っています。一定の「インディーズマンガ基金」を用意し、報酬を分配する。初期の今でこそ少額ですが、人気が高まれば規模も増していきます。
Amazonは「Amazonアソシエイト」という広告サービスをもっています。マンガ内に独自で広告を差しこみ、利益を得るという手段も考えられるのでは。
予測3「学生層の取り込み」
Amazonは比較的、「登録」や「決済」にハードルがあるサービスです。学生にとってですが。
学生はクレジットカードまず持ってません。なのでAmazonで買い物しようとしても、わざわざプリペイドカード買ったりと、すごく面倒くさいわけです。「Amazonスチューデント」という学生向けの激安サービスがありますが、「そもそも登録とか決済とかよくわかんない……」という多くの学生には見向きもされません。ハードルが高い。(現在PayPalの銀行決済を導入検討中なんてウワサもありますが)
Kindleインディーズマンガは、この「登録ハードル」の破壊を多少手助けする気がします。「無料だったら……まぁちょっと登録してみようかな」となるのが心情です。
そしてこのKindleインディーズマンガで画期的なのは、あまりヘンな縛りがなく、「競合サービスで無料公開してても公開できる」ところです。これがデカい。KDPのくせに太っ腹。作者が積極的に宣伝することで、人気の競合サービスからの流入も見込めるし、SNSでの拡散もある。
予測4「kindleストアのレビューが活気づく」
kindleインディーズマンガは、「よーし、応援のためにレビューするかー!」という気にさせるには、非常にイイ仕組みだとおもいます。実際すでに、「なんでこんな短編なのにこんなレビューついてんの!?」という作品がチラホラあります(もちろんプロ漫画家のネームバリューが元々高い場合もある)。
読者がレビューを書くことのメリットは、ここに列挙するまでもなく重大です。このあたりの「文化」が生まれれば、kindleストアそのものが更に活気づくかもしれません。
おわりに 「捕らぬタヌキの皮算用」
Kindleインディーズマンガ、いろいろな可能性を秘めた画期的なサービスだとおもいます。クリエイターが、編集者や出版社に依存せず、自立したカタチで活躍できればこれほど素晴らしいことはないです(異論はありそうですが。主に業界人から)。
ただ前述のとおり、「やりがい搾取」と受けとられかねない部分もあるので、そこはどうしていくんだろ?と気になるところです。
Kindleインディーズマンガが、YouTubeのように活気と夢のある場所になり、またマンガ家以外のクリエイターにも手が差し伸べられる未来を祈ります(kindleインディーズノベルのスタートはよ)。
今回は以上です。ここまでお読み頂きありがとうございました。
ではまたφ(・ω・ )
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