KDPセレクトのメリットが薄れている5つの理由【kindle個人出版】

 

hoshimi12です。いつもお世話になっております。


先日、KDPで「無料マンガの登録」という項目が増えました。それで疑問がほぼ確信に変わったので、情報の整理がてらまとめておきます。


やや長編です。

 

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おさらい 「KDPセレクトとは」

KDPセレクトとは、AmazonのKindle Direct Publishing(個人出版サービス)の1プログラムです。カンタンにいうと、Amazonで「独占出版」することで様々なメリットが得られるよ──という選択肢です。


今回はそのメリットが薄い、薄れてきている件について書きます。ただそのまえに、Amazonが掲げているKDPセレクトのメリットについて触れておこうと思います。

 

 

Amazonが掲げる「KDPセレクトのメリット」

 

  • 高いロイヤリティ
  • 本の売り上げ促進
  • 新たな読者の獲得

この三つを、AmazonはKDPセレクトトップページで「登録する理由(メリット)」として掲げています。

まずはその公式が掲げるメリットについてです。

 

 

メリット1「高いロイヤリティ」←わかる

 

KDPセレクトに登録した作品は、「70%のロイヤリティ」を獲得することができます。(ただし70%のロイヤリティは、250円以上の実売作品に限られます。たとえば99円作品は通常の35%しか得られません)


またKDPセレクト作品には、「Kindle Unlimitedへの参加権」が与えられます。


Kindle Unlimitedは、Amazonがスタートさせた月額980円の「読み放題サービス」です。それがスタートして以来、「読み放題の利益>>>>実売利益」となった個人作家が続出しました。


以上のように、KDPセレクトでは「70%」「Kindle Unlimited」という高ロイヤリティを手軽に得られるメリットがあります。電子書籍市場はKindleがほぼ独占していますので、個人で苦労してマルチストア展開しても、KDPセレクトオンリーの利益に勝ることは少ないです。


ここは純粋にメリットですね。今のところは。

 

 

メリット2「本の販売促進」←ほぼウソ

 

「本の売り上げ促進。2種類のキャンペーンツールがあり、どちらかをお選び頂けます」と、KDPセレクトトップページにあります。ですがこれ、大嘘です。


現在日本では、「Kindle Countdown Deals(期間限定セール」を選ぶことはできません。「無料キャンペーン」しか選べません。


で、唯一選ぶことのできる「無料キャンペーン」ですが、現在ほとんど販売促進効果はありません。無料本しか読まないユーザーは、無料本しか読みません。また、Kindle Unlimited・Kindleオーナーライブラリー・Prime Readingという競合サービスにより、なおさら無料本の意味が薄れています。


一時的にランキング上昇はするものの、ほんの僅かな期間です。


「無料キャンペーンを使うと、そこそこ多くのユーザーに読んでもらえるが、販売促進効果はほぼ皆無」というのが実情です。

 

 

メリット3「新たな読者の獲得」←微妙

 

「新たな読者の獲得。出版した本をできるだけ多くの読者に読んでもらうために、米国、英国、ドイツ、イタリア、スペイン~~~~中略~~~~日本、オーストラリアのKindle Unlimited(KU)、および米国、英国~~~中略~~~日本のKindleオーナーライブラリー(KOL)に登録することをお勧めします。」、と公式で書かれています。


日本語の本は、日本でしか読まれません(外国で読まれたとしても若干数)。


ちなみに「Kindleオーナーライブラリー」というのは、「Kindleを持ってるAmazonプライム会員が1ヶ月に1冊好きな本を選んで利用できるプログラム」です。物凄く影の薄いプログラムで、利用者はとても少ないです。Kindle Unlimitedの利用者も少ないです。


そもそもKDPは新しい読者の獲得には向かない場所です。各種SNSやプラットフォーム経由の読者がほとんど。


「KDP公式のオススメ本に選出される」ことがあれば、ストアでプッシュされ、新しい読者の獲得はできるかもしれませんが、それはごくごく稀なケースです。また、「公式がプッシュするKDP作家の固定化」が激しく、新たに割りこむのが難しい状況になっています。

 

 

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メリット希薄の5つの理由

 

前置きは以上です。以下、KDPセレクトのメリットが薄い、薄れてきた5つの理由をまとめていきます。

 

 

PrimeReadingの登場

 

「Prime Reading」というのは、Amazonプライム会員限定の読み放題サービスです。ちょっとややこしいんですけど、Kindle Unlimitedとは似ているようでちょっと違います。Kindle Unlimitedとの違いは、「プライム会員なら無料」「対応冊数が少ない」「ラインナップがよく変わる」点です。


このPrime Readingの「対応冊数が少ない」点なんですけど、さほどデメリットじゃないんですよね。公式が慎重に選定した結果の1000冊弱なわけで、言いかえれば「選りすぐりの良書揃い」なわけです。


一方Kindle Unlimitedは、「冊数は多いけど玉石混淆」なわけです。より玄人向けのサービス。ライトユーザーはPrime Readingに流れます。Prime Readingの位置づけは「Kindle Unlimitedの導入サービス」ですが、ハッキリ言ってKindle Unlimitedを喰っちゃってます。


KDP作家がPrime Readingに作品公開するには、「KDPセレクトに登録」かつ「中の人に選んでもらう」必要があります。(KDPセレクトが絶対という明記は見つけられなかったですが、Kindle Unlimited登録作品が前提なので、おおよそ間違ってないかと)


「じゃあやっぱKDPセレクトじゃないとダメなんじゃん!」と思われるかもしれませんが、ここが微妙なところ。Prime Readingの登場で、Kindle Unlimitedのアクティブユーザーが喰われ、結果的にKDPセレクト最大のメリットがむしろ失われた──個人的にはそう分析しています。


Kindle Unlimitedスタート当初、爆発的にユーザーが増えた結果、Amazonが人気作を強制排除して大炎上した事件がありました。Amazonとしては、「Kindle Unlimited作品が読まれすぎると困る」わけです。なぜって、作家が儲けすぎてしまうから。


Prime Readingで読まれた分は、作家には一円も入りません。ただ「ストア内での露出が増える」という特典があるだけです。


よってPrime Readingの登場で、相対的にKDPセレクトの価値は下がったと考えられます。

 

 

インディーズ無料マンガプログラムの登場(追記あり)

 

今回記事を書く動機となった新プログラムです。これは地味なプログラムのようにみえて、実はかなりクリティカルなものだと考えてます。


公式ページ1 公式ページ2


つまりですね、「KDPセレクトじゃなくてもカンタンに無料キャンペーンできるようにしたよー!」ってことなんです。(今までも一応「プライスマッチ」という裏技で無料公開する手はありましたが、今回は割愛)


マンガに限った話ですが、「Amazonが掲げてているKDPセレクト三大メリットのうちの一つを、日本KDPチーム自身で完全に消滅させた」ことになります。メリット2「本の販売促進」の部分がゴッソリ削れたカタチです。


「KDPセレクトのメリット」より、「インディーズWEBマンガのシェア奪取」を優先した。ひいては「作家への利益還元」よりも、「無料で多くのユーザーをかき集める」を優先したわけです。


Kindleの無料インディーズマンガプログラムに、ロイヤリティの支払い項目はありません。どんなに読まれても無料です。そして「無料キャンペーン」がKindleストアでほとんど販促効果をなしていないのは前述の通りです(Prime Readingは別)。また同時に、本プログラムの登場で「無料キャンペーン」の価値がさらに薄れるのは間違いないです。


タダ働きの客寄せパンダがほしい」。日本KDPチームの気持ちはわかるんですけど、だったらKindleストアを利用するメリットは無いわけですから(利便性の上でも)、「血迷ったか……?」というのが個人的な感想です。よほど他社のWEBマンガサービスより便利ならわかりませんが……今のところ致命的にストアもアプリも使いにくいですよね。というか、まったく手間もお金も掛けていない。


何か秘策があるのかわかりませんが、とりあえず「KDPセレクトのメリットが減った」ということは間違いないです。

 

◆追記

「無料インディーズマンガ」ですが、正式スタートに合わせて「上位者報酬型」のシステムを発表しました。初月は上位20名に対して10万円を支払うとのことで、おそらくプログラムの人気拡大に応じてその範囲を広げていくものと思われます。(2018年現在) 

 

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マルチストア展開という選択肢

 

個人作を受け付けている取次サービスがあります。「電書バト」がそうですね(ただしマンガ作品)。


商業作がKindle Unlimitedに対応しているように、取次経由の個人作もKindle Unlimitedに対応できます(ただし条件は要確認)。そのぶん取次サービスにマージンは取られますが、わざわざKDPセレクトに登録しないでもKindle Unlimitedを使う手は(一応)あるわけです。とはいえ好待遇なのはマンガ作品に限ったことなので、小説作品はまず受けつけないと思われます。


取次経由でマルチストア展開でき、かつKindle Unlimitedに対応できるなら、KDPセレクトを選ぶ必要性は薄いでしょう。

 

 

内外のレッドオーシャン化

 

レッドオーシャンとはカンタンにいうと、「少ない魚を大量のサメが奪いあう血みどろの海」という意味です。反対語に「ブルーオーシャン」があります。
 
 
Kindleストアは、紛れもないレッドオーシャンです。プロとアマが入り乱れ、カテゴリ分けもメチャクチャ、ランキングもグチャグチャ、UIもハチャメチャ、玉石混淆、粗製濫造、読者は自分好みの作品を探すのも一苦労です。
 
 
出版業界の凋落により、「個人出版」の需要も急速に伸びています。有料だろうが無料だろうが、みんなそれぞれいろんなプラットフォームで「個人出版」している。SNSで無料マンガ載せるのだってそうです。Kindleストアだけでなく、全方位的に出版のレッドオーシャン化が進んでいます。
 
 
そのレッドオーシャンで、有料サービスで作品を読んでもらうというのは、並大抵のことじゃないです。ましてや読者の数はどんどん減っている。読者が減ったからこそ出版業界の凋落がある。小説やマンガを読むより、YouTubeやTwitterやソシャゲで遊んでるほうがたのしいヒトが増えている。──なのに、「個人出版したいヒト」は増えている。需要と供給がまったく追いついていない。
 
 
Amazonとしては、作品が増えれば増えるほどロングテールで儲かりますから、レッドオーシャンなんてむしろウェルカムなんでしょう(Amazon自身はブルーオーシャンにいる)。
 
 
内外のレッドオーシャン化、ユーザーの選択肢が増えすぎている今、わざわざ「Kindle独占出版」をする意味合いも薄れてしまっているわけです。Kindle独占になれば、公開手段が限られますから、レッドオーシャンで逆に不利になりかねない。

 

 

「まったく売れない作品を独占有料公開して何になるの?」

 

最後に、これは「そもそも論」になります。まったく売れない作品を、Kindleストアで独占配信して、いったい何になるのか。
 
 
作品が売れなければ、「もっと多くのヒトに読んでもらいたい」と思うのが当然の心理です。そこで「KDPセレクト」が最大の足枷になるわけです。KDPセレクトに登録している以上、独占出版ですから、外部サイトでキャンペーンを打つことはできません。
 
 
そもそもまったく売れないし、知名度もないのに、Kindleストアで有料公開し続けたって、いつまで経っても売れないですよね。「売れるまで出す」のも手だとは思いますが、その間ずっと「新しい読者との出会い」が得られないのは重大な機会損失であり、純粋な苦行です。
 
  
「まったく作品が売れない」場合、Kindleストアで独占配信するよりも、まず先にやるべきことがあるのでは。

 

 

おわりに 「そうはいってもKDPセレクト」

 

ここまでKDPセレクトのメリット希薄について書きましたが、それでも自分はしばらくKDPセレクトを使い続けるとおもいます。理由は大きく2つあります。

 

1,「ラクだから」
2,「電子書籍に依存したくない」

 

理由1、「ラクだから」。致命的っすね。KDPってほんとラクチンです。びっくりするくらいラクチン。こればっかりはAmazonさんほんとスゲー平易なサービス作ったなと。
 
 
マルチストア展開とか、めちゃくちゃメンドクサイですからね。取次にめちゃくちゃマージンとられますし。それに結局、電子書籍が一番売れる場所はどう足掻いてもKindleですよ。だからこそKindleもあぐらかいていられる。(ただしストアごとに得意ジャンルが異なる場合もある。成人作品などはDMM・DLsiteのほうが強い)
 
 
理由2、「電子書籍に依存したくない」。電子書籍はたぶん、今後もそんなに流行らないですよ(というかマネタイズが苦しい)。よほど革新的なサービス(それこそ〝漫画村〟のような全社横断の読み放題サービスとか)が現れない限り。出版業界自体もどんどん萎んでいきます。低減税率のために表現規制を強化してるのもそうですが、出版の「夢」がどんどん無くなってきている。そこに依存するのは、あまりにも恐怖です。
 
 
これからの作家は、「出版」以外の活路を見出さなければならない──これはもうほとんど共通の理解だとおもいます。
 
 
なので、「KDPに全力投球ッ!」というよりは、「他のメインをやりながらサブ的にKDPを利用」のほうが、作家の将来がある気がします。電子書籍に注力しすぎたくないからこそ、KDPセレクトという存在はありがたいわけです。もちろん、独占出版が足枷になるなら、その時の判断で外す必要がありますが。
 
 
貶したり褒めたり忙しいですが、KDPセレクトへの所感はこんなところです。あとはもう好み次第じゃないっすかね(投げやり) 
 
 
皆さま良き個人出版ライフを。ではまた!φ(・ω・ )

 

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