Amazonが「日本の悪習」にメスをいれました。
書籍を「買い切り方式」へ。2019年内に施行します。
この記事の目次
「買い切り方式って?」
書籍には主に「買い切り」と「委託」の2つの売り方があります。
カンタンにいうと────
委託は「返品できる」。
買い切りは「返品できない」。
いまの日本の書店では「委託」が主流です。
「委託と買い切り、どっちがいいの?」
「委託のメリットデメリットは?」
▼ 委託のメリット
- (一見)書店が損をしにくい
- 取次と出版社が「書店をコントロール」できる
- 本を「ニセ金化」できる
▼ 委託のデメリット
- 返品率が高いと業界がまわらない
委託は「低い返品率ありき」の売り方です。
書店にしてみたら、「売れなくてもまぁ、返品できるからいっかww」みたいな感じです。「再販制度」と合わさり、完全な「ぬるま湯」と化していた。
ですが当然────返品率が高ければ、委託システムは崩壊します。
「買い切りのメリットデメリットは?」
▼ 買い切りのメリット
- 出版社が返品に苦しめられない
- 書店が責任をもって本を売る
▼ 買い切りのデメリット
- 売れなかったら書店の損
買い切りは「返品不可」の売り方です。
売れなかったら書店の損になります。
「岩波書店」が代表的な買い切り系出版社でした。書店としては「返品できないのキツいなぁ……」って感じですが、岩波書店の本はよく売れるので回っていた。「返品不可」は岩波書店の「本への自信のあらわれ」でもあったようにも思えます。
ハッキリいって「買い切り」のほうが、「健全な売り方」です。
「再販制度って?」
再販制度は、日本の出版業界が生んだ「既得権」です。
日本の出版業界は、いままで再販制度というルールに守られていた。
再販制度はカンタンにいうと、「値段を変えられないルール」。
「全国共通の値段」にすることで、出版文化をまもり、小さな書店をまもる────そんなウソ八百で塗りかためられたぬるま湯ルールです。
まず再販制度と委託システムのせいで、「本のニセ金化」が進みました。本が安売りされず、返品もし放題。日本の出版社は、赤字を埋めるために出版しまくってニセ金で補填するという────ある種の「自転車操業」の手口で生きながらえてきた。
結果、ぬるま湯がぐつぐつ煮えはじめているのに、それに気づかず、いまごろ「やべー!」って叫んでるマヌケなカエル状態におちいっているわけです。
「売れないものを安くできない」────自分たちを守るためにつくったルールに、いま苦しめられている。
そして多くのヒトビトが「再販制度そろそろやめたほうがよくね……?」といっているのに、一部の底抜けにマヌケがカエルが「いーやまだまだいける!」とのたまっている。
日本の出版業界は、再販制度とともに「ゆでガエル」になろうとしている。
「つまり……Amazonが買い切りをはじめるのは……」
Amazonは、日本の再販制度をつぶそうとしている。
「本の価格設定も検討」といってますから、そういうことです。
「一定期間は出版社がきめた価格で販売するが、売れのこった場合は出版社と協議して値下げも検討する」────かなりマイルドな言い方ですが、つまり「再販制度を形骸化」させたいわけです。
すこしずつ、すこしずつ、再販制度の首を絞めあげていく。
取次業界は阿鼻叫喚だとおもいます。
日本の「取次会社」は、再販制度というクソルールのおかげで生きながらえてきた既得権益そのものです。取次会社は、Amazonにしたらジャマで仕方がない存在。
出版社としても、Amazonと「直接取引」をはじめているあたり、取次会社を見かぎりはじめている。
ですが────日本の出版業界はマヌケなカエルなので、ギリギリまでAmazonの意図には気がつかないかもしれません。
まとめ 「マヌケなカエルしか困らない」
日本の出版業界は、すでに衰退産業です。
本に高い価値をかんじるヒトビトが、減っている。こんな時代だからこそ、「売れないものは安く売る」という当然の売り方が必要です。
Amazonはただ、「日本特有の狂ったルールにメスをいれた」だけ。
消費者にはメリットしかないです。Kindleみたいに「本の安売りセール」を体験できるかもしれない。
ただし────
「どう転んでも出版業界の未来は明るくない」というのが、個人的な印象です。
「読書」をする若者なんて、いまほとんどいない。ネットの長文すら読まない。
再販制度が是正されようが、日本の出版業界が健全化しようが、出版文化はひたすら縮小していくのみ────そうおもえてならないです。
せめて「健全なシステム」で後世にのこってくれることを祈ります。