質問をいただいたので。
「プロットの書き方」についてまとめます。
ほぼ自己流です。あまり期待しないでください。
この記事の目次
「プロットとあらずじの違いは?」
プロットは設計図。あらすじ(シプノシス/梗概)は説明書。
プロットは作者のためにあり、あらすじは他人のためにある。良いプロットは十人十色、良いあらすじは万人共通。プロットは未完成品、あらすじは完成品。
まったくの別モノ。
「ストーリーの基本は?」
ストーリーには「展開の考え方」がいくつかあります。
基本的には以下の4つです。
- 起承転結
- 序破急
- 三幕構成
- シンデレラ曲線
この4つはあくまで「ツール」です。好きなように使いましょう。
「起承転結?」
ストーリーを「起」「承」「転」「結」にわける考え方。
もっとも有名で、もっともカンタン。ただしそのぶんアヤフヤ。
- 起 ⇒ OPや舞台説明(短)
- 承 ⇒ 転への過程や助走(長)
- 転 ⇒ 最高のもりあがり(短or長)
- 結 ⇒ ED(激短)
▼ 起承転結

「序破急?」
序破急は「舞楽」から生まれた考え方。
「序」「破」「急」の三段でストーリーをとらえる。
序破急は起承転結以上にアヤフヤな概念。おなじ三段形式なら序破急よりも「三幕構成」を学んだほうがいい。
▼ 序破急

「三幕構成?」
「三幕構成」はポピュラーな脚本構成術。
ストーリーを3つの幕にわける手法。項目はおおいけどとても具体的。
▼三幕構成

三幕構成をつかえば、だれでも「まとも」なストーリーがつくれます。もちろん面白いかどうかは別。
- オープニング
- セットアップ
- カタリスト
- セントラル・クエスチョン
- 第2の10ページ
- 第3の10ページ
- ファースト・ターニングポイント
- フィン・アンド・ゲームズ
- ミッドポイント
- バッド・ガイズ・クローズ・イン
- オール・イズ・ロスト
- ダークナイト・オブ・ザ・ソウル
- セカンド・ターニングポイント
- クライマックス
- レゾリューション
- エンディング
▲ これらを箇条書きで穴埋めしていくのが初心者にオススメ。
詳細はWikipediaの「三幕構成」にて。こんなにたくさんの項目を覚えたくないなら「起承転結」でかんがえましょう。両者つかいわけてプロットをねるのもアリ。
「シンデレラ曲線?」
シンデレラ曲線は「感情の起伏」をグラフ化したもの。
▼ シンデレラ曲線

X軸が「時間」、Y軸が「感情」。視覚的にわかりやすい。
自作ストーリーのグラフをかいてみるのも1つの手。シンデレラ曲線の有用性はなんといっても「可視化」。ストーリーが単調かどうか一目でわかる。
注意すべきは「ジャンルによって曲線はかわる」こと。無理して「シンデレラ」の曲線に合わせることはない。
「プロットってどう書くの?」
「ざっくりおしえて!」
- 箇条書き
- ツールで
- ペラ2枚
- 縛られない
「箇条書き?」
プロットは「見やすい」ことが重要。
イチバン見やすいのは箇条書きです。
- おじいさんが竹をたたき切った
- 中のかぐや姫に刃がすこしあたった
- 両親から多額の賠償金を請求された
- おじいさんは自己破産した
竹とりを仕事にしてるおじいさんが、竹やぶで光る竹をみつけた。ふしぎにおもって竹をたたき切ってみると、中にはかわいい女の子が。しかしスレスレで切ってしまったため、額からすこし血がでている。そこへ女の子の両親がかけつけて、「牢屋で余生をおくらせてやる!」とおじいさんを脅した。弁護士立ち会いのもと示談が成立。おじいさんは多額の賠償金を支払うことになった。負債をおったおじいさんは、竹とりを廃業し、自己破産した。
▲ 極端な例ですが、箇条書きのほうが短い文量でおさまります。
プロットとあらすじは違います。プロットをわざわざあらすじのように書く理由はない。自分がわかりやすいように書く。
「ツールで?」
下の4つのツールを使用。
「起承転結」「序破急」「三幕構成」「シンデレラ曲線」。
正解はない。ツールを好きにつかってプロットをつくる。「起承転結」の4分割でかいてもいいし、「序破急」「三幕構成」の3分割でかいてもいい。「シンデレラ曲線」で視覚化してみるのもアリ。
初心者にオススメなのは「三幕構成の穴埋め」ですが、展開がありきたりになってしまうデメリットもある。
三幕構成でかいてから起承転結にわけるのもアリ。
「ペラ2枚?」
- ストーリー表
- 登場人物表
「ストーリー」と「登場人物」をわける。
宝島の地図をかくつもりで、それぞれ1枚にまとめる。
具体的には2000~10000字ほど。ジャンルによって上下しますが、「1~2枚でラクに視認できる」ことが重要。
(出版社への持ちこみの場合はしりません。たぶんもっと文量が必要)
デジタルで済まさず「印刷」するのがオススメ。
「縛られない?」
プロットは「ぼんやり」したものにすぎない。
推敲をおわらせるまでストーリーは完成しない。初期構想からズレていくことなんてプロでもザラにある。
また、プロットを書きこみすぎると本文執筆が「退屈」になる。
展開もゴールもわかりきった迷路をたのしむのは、凡人にはなかなかむずかしい。作者にとって退屈なストーリーは、読者にとっても退屈。
あえてプロットをぼんやりさせる。本文を書きながら練っていく。それもひとつの手。
「5W1Hって?」
- いつ(WHEN)
- どこで(WHERE)
- だれが(WHO)
- なにを(WHAT)
- なぜ(WHY)
- どのように(HOW)
プロットをかくなら5W1Hを明確にしておく。
「時代」「場所」「登場人物」「目的」「理由」「展開」。
基本的には「主人公」にフォーカスしてかんがえる。ただし「悪役」にフォーカスしたほうがわかりやすいときもある。臨機応変に。
「あんたはどうなの?」
自分は「プロットなし」「プロットあり」の両方を試しました。
「プロットなし」の作品は、完成しませんでした。
ここは「性格」でかわります。
カンペキ主義な性格ならプロットを書いたほうがいい。ストーリーの破綻にたえられなくて精神をすりへらしてしまう。
おおざっぱな性格ならプロットなしでもぜんぜんOK。たとえ整合性がなくても面白い作品はあります。ストーリーは理屈じゃない。
「プロットを作らない場合の理由は?」
- 執筆が退屈になるから
- 意外性がなくなるから
- ストーリーが短いから
- 早く書きあげたいから
プロットをつくらない作家もいます。
最大の理由は、「プロットをつくると展開が予測できてしまう」から。
プロットなしだと「作者にすら予想できなかった展開!」という意外性が生まれやすい。ぞくにいう「キャラが勝手に動きだす」状態。
ただやはり、地図がなければ迷ってしまうのがふつうの人間です。
「プロットの例は?」
プロットの書きかたは十人十色。正解はないです。
以下はあくまで自分の例。ざっくり。他人にみせる用ではない。
▼ 登場人物
秋山:主人公
ハマル:ヒロイン
冬城:研究者
▼ 起
- 主人公は塾講師の青年・秋山。
- 怪しい女・冬城に「家庭教師の高給バイト」を紹介される。
- 秋山、金につられてホイホイついていく。
- 研究所で少女・ハマルと出会う。
▼ 承
- ハマルは白髪でフードをかぶっている。
- ハマルのことは詮索厳禁。
- 先生と教え子の日々。
- ハマルがすこしずつ心をひらく。
- 秋山、ついにフードのことを指摘。
- ハマルはフードをぬぐ。頭には2本のツノ。
- 人工生物「キメラ」であることを告白。
- とまどう秋山。家庭教師をつづける決意。
- 研究所で火災事件。
- ハマルに「連れだして」と頼まれる。
- 秋山は彼女の手をひき、研究所をとびだす。
- 自宅アパートで逃亡生活。
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- なんやかんや。※1
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- 秋山、疑念や不安をつのらせていく。
- ハマルはふつうの少女とちがう。
▼ 転
- ハマルに愛をせまられる。
- 秋山は怖じけづいて逃げだす。
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- なんやかんや。※2
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- 決意をかため、ハマルをさがす。
▼ 結
- ハマルをうけいれる。
- 2人でほかの街へ。
自分は「箇条書き」でざっくり考えることがおおいです。
そして問題は「なんやかんや」の部分です。※1と※2。
プロットを書いているとありがちなのが、「なんやかんや」でストーリーの道中を雑にすっ飛ばしてしまうこと。これを処理しなければ物語は完成しません。
「なんやかんやってなんや?」
なんやかんや────ストーリーの「つなぎ」です。
キャラの感情や世界の流れが、ひとつの結果にむかっていくまでの過程。
前項の「※1」の場合、「ヒロインとの逃亡生活のなかで、主人公がすこしずつ疑念や不安をつのらせていく」部分が、なんやかんやです。
ただの「感情の変化」ですが、それをえがくのがストーリー。
ではどうするか────当然ここにも箇条書きプロットを用意します。
- 秋山はハマルを研究所から逃がした。
- 自宅アパートで同棲生活がはじまる。
- 翌朝、アパート前で不審な男を目撃する。
- ポストをみると、1枚の手紙が。
- 「金銭面はこちらで負担する」
- 「安心していい。いずれまた連絡する」
- 秋山はATMまで走って口座を確認する。
- 「給与」という名目で300万振り込まれていた。
- 手紙の主は、家庭教師にさそった冬城だ。
- 秋山はこの逃亡劇が「仕組まれていた」ことをしる。
- ハマルはこのことをしっていたのだろうか。
- ハマルへの疑念がうまれる。
- しかしたずねることはできず、仮初めの日常がはじまる。
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- なんやかんや。※3
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- ハマルに特別な感情が芽生えるが、疑念や不安をぬぐえない。
はい、また「なんやかんや」が登場しました。
次にこの※3のプロットを考えて────といきたいところですが、記事が長くなりすぎるのでさすがにそろそろ割愛します。
つまり、「なんやかんやを埋めることをくりかえす」。
自分は「プロットの肉付け」と呼んでいます。
▼ プロット~完成までの流れ
- ざっくりと箇条書きプロットをつくる
- なんやかんや部分のプロットをうめる
- シーンの順番いれかえを検討する
- なんやかんや部分のプロットをうめる
- 主要なセリフもプロットにうめこむ
- どんどん詳細にかきこんでいく
- 箇条書きから解放する
- カタチをととのえる
- 推敲をかさねる
- 完成
最初から「なんやかんや」で省略せず、一気にプロットを書けるにこしたことはないですが、常人にそれはむずかしい。
まずざっくりとプロットを書きなぐる。つなぎの部分は「なんやかんや」でひとまず省略。クライマックスがみえたら肉付け。────すこしずつ完成させていく。
以上が、自分なりの「なんやかんや」の攻略方法です。
「参考になる本は?」
▲ たぶん最も有名な「日本のシナリオ技術」の本
この本『シナリオの基礎技術』はたしかに初学者の参考になるんですけど、注意としては「いくらなんでも例題が古すぎる」こと。本のレイアウトも古く、お世辞にも読みやすい本ではありません。ただ、大体みんなもってると。
▲ 個人的に最良の文章ハウツー本です
天声人語を担当していた新聞記者の方の本であり、だれがどう読んでも「このヒトは文章がうまい」と感じるはずです。さまざまな作者の名文を例にして、文章のみがき方を提案してくれます。
ただこれは「シナリオの書き方の本」ではなく、タイトルどおり「文章のみがき方」の本です。もっと広い意味になっています。日本語による「いい文章」とはなんなのか、まずそれを知りたい人にオススメです。
まとめ「破綻をへらすツール」
プロットは「破綻のないストーリー」をかくためのツールです。
ちゃんと練れば「とりあえず読めるもの」ができる。ただしそれだけです。「おもしろさ」は流動的なもの。鮮度があるし、好みもちがう。
執筆作業は「旅」に似てるとおもいます。ガチガチのスケジュールか、行き当たりばったりか。どちらもちがった楽しみがある。
どんな旅にするかは、ヒトそれぞれです。
今回は以上です。人生に良きストーリーを────ではまたφ(・ω・ )
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