キミと出会い、多くのものを失った。 出会えてよかった──胸を張ってそう言えるだろうか。 僕はまだ悩んでいる。 一度狂った歯車は、もう元には戻らない。 キミのせいとは思わない。キミに罪などあるわけがない。 どうしてこの手を離せるだろうか。 もうあとには引けない。必ずキミを守ると決めた。 もとより空虚な命だった。 キミのためなら、僕は、何者にでも──── ◆ |
記憶を失った男──秋山義文(あきやまよしふみ)。 目覚めるとそこは、山の奥深く、黄色いテントの中だった。 ボロボロの身体に鞭打ち、外へ這い出ると、不思議な少女・ハマルと出会う。 彼女は人間とは異なる姿をしていた。 秋山は彼女を愛おしく想い、山奥で共に過ごすようになる。 そしてある時、二人のもとへ招かれざる来訪者たちが訪れ、決断を迫られる。 |