「クイーンビー」は、スクールカーストの最上位。
メジャー運動部系の女子であることがおおい。
由来はもちろん、女王バチ。
同列の存在に「ジョック」がいる。
メジャー運動部系の男子であることがおおい。
由来は男性用下着のジョックストラップ。
スポーツマンかヘンタイがはくやつだ。
取りまきは「サイドキックス」。
ズボンの横ポケットをキックとよび、そこに財布があるとスリは盗みづらい。
なので「信頼できる相棒」という意味だ。
クイーンビーとジョックそれぞれに2人程度いることがおおい。
さらに下の子分に「プリーザー」。
プリーズする、つまり「たかる者」。
上位勢と懇意なのをいいことに、幅をきかせる腰ぎんちゃく、金魚のフン。
権力にむらがる連中は腐るほどいる。
「ワナビー」は、上位勢にあこがれる存在だ。
Wanna be、夢みる者の蔑称である。
これまた腐るほどいる。そしておおよそ叶わない。
神取リサは、すこしかわったクイーンビーだった。
カンタンにいうなら「やさしい」のだ。
「敗者」とよばれる下位グループも、彼女は差別しない。
奇人変人・オタク・ガリ勉にもトモダチがおおいのが、彼女の最たる特徴。
彼女の王制は、じつに平和的だった。
────オモテ向きはな。
ぼくは彼女の本性をしっている。
彼女は、とある「イジメ」の主犯格だった。
ターゲットは、もちろんぼくだ。
リサはじつにうまくやった。
周囲を言葉たくみに扇動し、ぼくを痛めつけた。
そして、自分の手は汚さない。
実行犯は、サイドキックスやプリーザー、ワナビーの連中。
リサは証拠不十分で、「処分」をまぬがれた。
カルトの教祖が、「信者がかってにやっただけ」と、言い訳するのと同じ手口。
「それで、どうやってリーダーに仕立てるおつもりで?」
学園の帰り道、比奈子がきいてきた。
ちなみに比奈子は、スクールカーストでいうと「ゴス」だろう。
ゴスロリが趣味のオタク。
学園ではしずかな優等生をきどっているが。
そしてぼくは、「プレップ」。
金もちのボンボンという意味だ。
ルーザーたちとはちがう方向で、嫌われモノ。
由来は高級進学校、プレパラトリースクール。
「弱みをつかう」
「弱み?」
「おまえがみつけた、〝盗み〟の件だ」
やさしく明るいクイーンビー。
バケの皮は、とっくにはがれている。