カルト教団の5段階のライフサイクル 発祥から解体まで

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「どうすれば、カルト教団をつくれるとおもう?」


ぼくは問う。
比奈子はきょとんとしていた。


「お紅茶、さめますよ」
「まじめに聞いてるんだ」


アトリエの自室。
トレイをもって去ろうとする比奈子の手をつかむ。
比奈子は目をほそめ、しばらくぼくを見つめた。


「なにをするおつもりですか」
「だから、カルトをつくるんだよ」
「なぜ?」
「クジョウをのっとる下準備だ」


株式会社クジョウ。
おクスリから軍事用オートマタまで。
この国を代表する、大複合企業コングロマリットだ。


「アホな人間どもを、うまくあやつりたい」


比奈子がため息をつくのを聞き逃さなかった。
ぼくは気にせず話をすすめた。
ノートパソコンの画面をみせる。


比奈子に、計画の一端をみせる。


「カルトは、発祥から解体までに、5つのサイクルをたどるという」


教団ライフサイクル論。
えらい宗教学者が何十年もまえに提唱した。

  1. 萌芽:社会不安を背景に、カリスマリーダーがあらわれる
  2. 成文:目標が言語化され、部外者とのちがいが強調される
  3. 合理:いっけん、規律ただしい、合理的な組織が完成する
  4. 保守:官僚的な幹部があらわれ、信仰が形骸化
  5. 腐敗:幹部へのふまんから、退会者がふえる

まずカリスマリーダーが、社会への不安をだいべんする。
同調者がつどい、集団ができる。
その集団がカルトとなる。


「カリスマリーダーは、若さまが?」


小バカにしたように比奈子が小首をかしげる。


「いんや。そのへんは、おいおい説明するよ」


規律や目標は、成文化────文字にかきおこすことが重要だ。
ルールが決まれば、部外者と差別化ができる。


ルールのもと、集団は組織化する。
規律ただしく合理的になる。


だがここで、組織は腐りはじめる。
生まれた瞬間から、腐りはじめる。
宿命だ。


合理化により、運営者が「官僚化」するのだ。
官僚は、信仰ではなく、特権保持を目的にしはじめる。


信仰が、形骸化していく。
組織への参加資格も、ゆるんでいく。


組織の腐敗はとまらない。
官僚化した運営者への不満で、退会者がふえる。


ここが組織の、分かれ目だ。


「改革」


一部のリーダーが、信仰復興の改革運動をおこす。
その改革が成功すれば────
組織は、あらたなサイクルをスタートさせる。


改革がすべてだ。


成功すれば、組織は復活。
失敗すれば、組織は解体。


企業も、カルトも、本質はそうかわらない。


「組織は、かならず腐る」
「ええ」
「だが、改革運動を成功させれば、永久に組織を維持できる」
「……と?」
「まだまださきの話だけどな」


まずは組織をつくることだ。
カルト的な、強い組織を。


そのために、知恵を借りたい。
比奈子はかしこい子だ。


ぼくは画面をスライドさせる。


「これは?」
「組織の、幹部候補だ」


少年少女たちのリストが、写真つきで表示されている。


「すでに〝マーキング〟はおこなっておいた。どいつもこいつも、社会に強い不満感情をもっている。とりわけ────クジョウにたいしてな」
「……ずいぶん若いですね、みな」
「見覚えがあるやつもいるんじゃないか」
「まさか…………学園の生徒たち?」
「ああ」


このときたぶん、ぼくは笑ったとおもう。


「子どもは、未来だ」


十年後、二十年後、子どもが社会をになっていく。
大人はこのへん、よくわかってないバカが多い。


いちばん大事なのは、子どもなのだ。


「手はじめに────学園を支配する」


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※ 小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。