商業作家が個人出版しない6つの理由【セルフパブリッシング】

 

hoshimi12です。いつもお世話になっております。
 
 
Twitterやってると、よく「商業作家の窮状」が流れてきます。有名なマンガ家さんやイラストレーターさんだと数万フォロワーなんてザラですから、ちょっとぼやくだけでめちゃくちゃ拡散されて、炎上したり議論になったり。で、基本的に出版業界がぶん殴られます(自業自得)。
 
 
そのたび個人的に疑問なのですが、「商業出版でそんなに辛い目にあったなら、なぜ個人出版をやらないのだろう?」と。それですこし整理してみることにしました。
 
 
ここでいう「個人出版」は、電子書籍でのストア配信をさします。高額な資金が必要な「自費出版(紙)」とはべつにして考えます。
 
 
結論を先に言えば、次の6つの理由かなと思いました。「単純に儲からない」「出版業界で干されそう」「ノウハウがない」「自費出版と混同してる」「クオリティをさげたくない」「商業にいる自分が好き」

 

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電子書籍は儲からない?

 

自分がかつて商業出版したとき、担当編集者に電子書籍のことを尋ねたところ、「いやー、電子書籍はぜんぜん売れないですよー」と仰ってました。おそらく他の作家さんもだいたいそういう風に吹き込まれていると思います。
 
 
で、それから実際に、電子書籍で個人出版してみました。そしたらまぁ──「一概にはいえない」ということがわかりました。
 
 
自分は一度商業出版したきりの売れてない作家なんですが、オリジナルの電子書籍6冊で、去年は40万円でした(すいません何とも言いづらい数字で)。ただ、個人出版でもっと売れてる方々のことは知ってます。
 
 
電子書籍の個人出版といえど、売れてる方は売れてます。アダルト漫画で1000万近く稼いだ方もいますし、月数十万稼いでるアマチュア小説家の方々もいますし、プロマンガ家さんもけっこう稼いでる方いるのでは。
 
 
「電子書籍は売れない」ってのは、ウソですよ。ただ、「電子書籍はすっごく売れる!」とは言えないだけで、それは商業の紙出版でも同じことです。また、商業出版なら印税5~10%ですが、Kindle個人出版(KDP)なら最大で70%のロイヤリティなので、商業ほど売れる必要がないというのが前提にあります。それに、紙の本とちがって「絶版」のリスクもまずありません。

 

 

業界で干されるのがこわい

 

まず、「編集者はなぜ作家に電子書籍をすすめないのか」ということなんですが、じつはこれ、「ちがう部署の功績になるから」というのが大きく影響してるみたいなんです。だんだん社内でも統合されてきているはずですが、「本をつくる編集部」と「電子書籍うんぬんの部」が別に存在していて、社内で功績を奪い合ってると。結果、作家の担当編集は「積極的に電子書籍をすすめる必要性がない」ってことなんです。そりゃそうですよね。
 
 
また出版社としても、「なるべく紙書籍で買ってもらいたいなぁ……」って考えてるところがまだまだ多い。よくTwitterで流れてくる「電子書籍の売上は考慮しない問題」がそうですね。読者が電子書籍に流れてしまえば、自分たちの仕事が奪われてしまうのではという懸念を抱いている。今のところ日本の出版業界は、Amazonに対抗できるサービスを作れていないですから。
 
 
このように、出版業界は常日頃から「囲い込む」ことに必死です。もしお抱えの作家が「個人出版」なんて始めたら、あんまり面白くないでしょうね。作家がどんなに個人出版で儲けようと、出版社には一銭も入りませんから。「こいつは我々に逆らった!」とも捉えられかねない。次の仕事がこなくなるかもしれない。──なんて、不安に思ってしまう商業作家さんも少なからずいるはずです。

 

 

わからない・めんどくさい

 

素晴らしいマンガや小説を書ける方が、それ以外の場面にもおいても人並み以上の能力を発揮するとは限りません。家事ができないかもしれないし、朝自分で起きれないかもしれないし、編集者がいないとぜんぜん締切に間に合わない方もいるかもしれない。
 
 
そういう「誰かのサポートなしに動けない作家」には、確かに個人出版はむずかしいです。ストアに登録して……必要なもの発注して……epubファイルを作って……アップロードして……売上を管理して……確定申告して……。こういうのを「めんどうくさい」「割に合わない」って感じるのは、ごく自然なことだと思います。
 
 
この「わからない・めんどくさい」を手っとり早く解消するには、結局高いマージンを仲介業者に支払うしかないんで、既存の出版業界のスタイルが合っていると思います。

 

 

自費出版と混同してる

 

「個人出版」と「自費出版」は微妙に違うものです。これを混同している方々が出版業界でもすごく多い。
 
 
電子書籍の個人出版では、作品の制作費以外はお金がかかりません(もちろん利益配分はべつですが)。紙ではないので、「印刷費」だとか「書店においてもらうための根回しのお金」だとかも不要です。Kindle個人出版も無料登録ではじめられます。
 
 
「自費出版」の言葉のイメージ、とても悪いんですよね。出版業界に詳しい方ほど、「詐欺」のイメージが根深いと思います。高額な出版費を請求して、どうしても出版してみたい作家希望者に支払わせるやつです。(自費出版からメジャーになるパターンもあるので一概にはいえませんが)
 
 
この「自費出版という言葉の悪いイメージ」もまた、商業作家を踏み留まらせる一因になっているのではと考えます。

 

 

クオリティをさげたくない

 

個人作と商業作のちがいで、なんといっても大きいのは「クオリティ」です。特にマンガは、たくさんのアシスタントを非合法な賃金で雇ってやっと回せるようなところがありますし、品質の安定性という点では商業に軍配があがるとおもいます。


「出版」がもはやブログやYouTubeやTwitterの個人投稿くらい身近なものになりつつあるといっても、「高品質」を求める読者さんが多いことは事実です。


ただ、「商業出版でも粗製濫造は横行している」「ネット発コンテンツの青田買いが増えている」「インディーズでも商業に負けない高クオリティ作品が出てきている」のも事実です。ここらへんは徐々に縮まっていくものだと考えます。

 

 

商業にいる自分が好き

 

アニメ化とかコミカライズとか、ドラマ化とか映画化とか。夢の印税生活、周りから「○○先生」と呼ばれたり、テレビに芸能人といっしょに出たり。──そういう「誰からみても輝かしい作家像」に憧れて、商業作家を目指す方はすくなくないと思います。
 
 
個人出版は、そういった「メジャー」から最も離れた場所です。華々しさのカケラもありません。ストアではバカ売れしている個人作家さんでも、ほかでは一般人以下のネームバリューというのはザラです。
 
 
商業作家のほうが、ハッキリいって身内にも説明しやすいです。「Kindleで本出してる」っていうより、「KADOKAWAで本出した」っていったほうが早いです。そしたらみんなすこしわかった顔になります。そんなもんです。斜陽の出版業界にアンテナ張ってる人間がまず稀少ですし、「商業」というのは「スゴく使いやすい名刺」なんでしょう。その名刺を手放すのが惜しいという気持ちは、よくわかります。
 
 
また、「個人出版で人気のでた作家は、商業出版に引き抜かれていく」という身もフタもないパターンも多々あります。

 

 

おわりに

 

まとめてみて思いましたが、商業作家が個人出版をしたがらないのは、とても自然で当然──という結論に落ちつきました。
 
 
売れるかもわからない、業界干されるかもわからない、作り方もわからない、自費出版とのちがいもわからない、クオリティの保証もない、個人出版には華々しさがない。
 
 
代わりに個人出版には「自由」がありますが、自由じゃゴハンは食べられません。自由をゴハンにする工夫が必要で、全てにおいて自己責任、自分で何もかもやらなければならない。苦行に満ちています。──ただ、どのみち苦行だったら、一度天秤にかけてみるのも手だとは思います。


「個人出版と商業出版の両方をやる」という手もあります。具体的にいえば、「紙の出版権だけ出版社に渡して、電子書籍は個人でやる」パターン。少なくとも間違いないのは、いま電子書籍は出版社とおさないほうが稼げます(プロ・アマ問わず)。嫌な顔する出版社も多そうですが、そこは交渉次第ということで。
 
 
今回は以上です。ではまた!φ(・ω・ )

 

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